温泉ソムリエの鈴木です。
日本には混浴というものがありますが、世界的には非常に珍しいもので、ほぼ日本オリジナルの文化と言えます。
日本の混浴文化を調べてみると割と面白いこともあって、僕が知っている混浴文化について、いろいろと説明していきます。
変な気持ちではなく混浴に行ってみたい・・・と思ってくれれば嬉しいな。
なお間違いがあれば教えていただければ幸甚です。
混浴の定義
人によって混浴の定義が若干違うので、ここでは見知らぬ人同士でも、誰でも裸で入ることが出来る温泉という意味で書いていきます。
例えば東京都で言えば混浴はOKなのですが水着着用が義務付けられています。
裸で入る混浴は認められていないため東京都にはここで定義する混浴がありません。
また野湯も混浴と言えば混浴ですが、今回は省きます。
野湯とは温泉が自然に吹き出しているけど、入浴施設等はない温泉のことです。
気軽に行ける野湯としては秋田県の川原毛大滝湯が有名です。
また半混浴は含むことにします(半混浴=男女別の浴槽にはなっているものの、壁が無かったりする場合)。
最近は温泉旅館に行くと貸切風呂というものがありグループ単位で浴室を借り切って温泉に入れるというものが増えていますが、誰でもという定義から外れるので貸切風呂や家族風呂は除きます。
たまに「混浴なんてある訳無いだろ!」という書き込みを見るのですがむしろ混浴が無い道府県の方が少ないです。
なお、混浴で裸って見られるの?という疑問については以前書いているのでそちらをご覧ください。
混浴は昔は問題なかった時代もあった
開湯500年とか古くからある温泉地は数多くありますよね。
そういう温泉地は基本的に元々は混浴でした。
自然にお湯が湧いている場所に岩で囲ったりして、入りやすくして温泉に入るようになったため、元々男湯・女湯という考え方そのものがありませんでした。
ただし、下帯(ふんどし)や腰巻きをして下半身は見えないようにして、上半身だけは裸で入るという場合もあったそうです。
ここは研究者の中でも意見が別れるところですが、完全な裸での入浴というのは江戸時代以降からという人もいますし、それ以前から地方ではあったという説もあり、裸で温泉に入るという状況がいつ、日本で発生したかは定かではありません。
そして江戸時代へ
江戸の銭湯では混浴も当たり前な時期が半分以上あったということは割りと知られているお話です。温泉ではありません、銭湯での話です。
混浴OK→混浴禁止→混浴OK→混浴禁止(以下ループ)
というように繰り返されていたようです。
風紀が乱れる→禁止に・でも不便・混浴OKに→風紀が乱れる(以下ループ)
というようになっていたそうです。
これは全国的に見てもそうだったのですが、戦争が終わり全国に混浴禁止が通達されても山間の温泉まではその通達が届いていなかったり、もともと今ほど建物を山の中まで作ることが難しいところもあったりして見逃されたということもあり、昭和中期までは混浴も普通に開業出来る状態になっていました。
でも、次第に法律が細かく整備されてきて混浴は新規では開業出来なくなります。
厳密には法律ではなく各地方自治体が制定する公衆浴場条例により定められており、現在は新規で混浴を作ることは出来なくなりました。
つまりこれから混浴の旅館を作ろうとしたら既得権が無いと作れない状態になっています。
平成に入ってから全くの新規で混浴の温泉旅館を作ったというのは聞いたことがありません。混浴だった温泉宿を買い取って混浴のある旅館を新規にオープンさせたところはあります。
僕が知る限りですが、富山県の小川温泉元湯「ホテルおがわ」や新穂高温泉「野の花山荘」はオーナーが変わっていますが、混浴の既得権もそのまま受け継いで営業しています(野の花山荘はその後、混浴は取りやめ)。
この辺り、酒税法にも似ているな~って思います。全国販売したい新興のECサイトが全国販売出来る免許を持った酒屋から権利を買い取って展開しているあたり。
営業に関する既得権はそのまま継承することが出来るというのは日本の法律の面白いところですね。
話が脱線しましたが、混浴の旅館は昭和30年頃(1960年)くらいまでしか作れなかったため、基本的に50年以上の歴史を持つ温泉旅館が多く、その結果昔ながらの情緒がある温泉旅館が多くなっています。
また江戸時代に混浴が禁止されていた時代にも侍だけは女湯に入れたという特例もあったとか。
江戸が禁止されても大阪はOKだったとかもあるようです。
半混浴が多いところは、混浴が禁止されなかった関西・山陰山陽地方でそのまま根付いたようにも思います。東北には基本的には無いので(例外はみちのく温泉かな)
参考までに江戸時代から明治時代の開国時、混浴がかなり驚かれたという文献は結構あるみたいですね。
また戦争が終わってGHQ統治下になってからもかなり驚かれたとか。そして禁止になっていくのですが。
昔の方が裸というものには日本人は寛大であったように思います。
面白いのが共同湯としての混浴文化
混浴を文化として捉えた時に面白いのが共同湯としての混浴です。
大分県や長野県、福島県の一部で今でも残っています。他にもあるのかな?
温泉が豊富な地域では、家でお風呂場を持つのではなくその地域の人なら誰もが入れる共同浴場を作ってそこでお風呂に入るという文化がありました。
少ない共同体なら3~5件の家族だけで管理している共同湯というものもあります。
そこではその共同湯を管理している家の人であれば誰もが自由に入れるようになっており、老若男女関係なく一緒に普通にお風呂に入るということが行われていました。
そこでは子どもの頃から近所の人と一緒にお風呂に入るのが普通だったため、10代後半になった女性でも近所のオッサンと一緒に入っていたとか。
過去に1度だけ知り合いのツテでそういった共同湯に入らせてもらったことがありますが、面白い文化があるものだな~と温泉がそれほど多くは無い愛知県で育った僕は思ったものです。
なお、その共同浴場に入ったのは混雑していない時にということで紹介者(男性)と一緒に入ったので女性とは混浴していません。
そういう共同湯は「じも専」(じもせん=地元専用)と言われており温泉マニアはどうにかして入れないかツテを探している人もいたりします。
混浴よりも情緒を楽しもう
僕も男なんて女性の裸に興味が無いかと言えば大嘘になります。
だからと言って混浴によく行く理由がそれかといえば違います。
混浴は上記に書いた通り、どれだけ新しくても昭和中期くらいまで。大体は50年以上の歴史のある宿が多いと言えます。
古いからこそ醸しだす風情や情緒があるので、それを楽しんだ方がよほど良いのではないかと思います。
それに僕の場合写真が撮りたいのでわざと人が少ない時間帯に行っていたので(混雑していると撮影許可は降りない)、ほとんどが貸切状態で入っています。
貸切状態で広い湯船に入る贅沢、最高です!
お泊りで深夜に誰も居ない情緒ある露天風呂で星空を眺めながら入る贅沢は1度味わってしまうと繰り返したくなります。
最近は奥さんと一緒に入りたいので個室露天風呂付き客室だったり貸切が出来るところに行くようになりましたが、好きな人と一緒にのんびり温泉に入る幸せは本当におすすめです。
もっとも個室露天風呂付き客室とか貸切が出来るところって高いから女性も入りやすい混浴の宿にも行ったりしていますが。
以上、混浴文化についてでした。
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